子育て失敗

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 6月9日朝
 玄関前にキジ鳩の雛が1羽うずくまっていた。部屋の中から巣を覗いてみるともう1羽の雛もいない。人が触ると親鳥は子育てをやめてしまうということを聞いていたので、どうしたものかと思案したが、このまま置けば近所の猫の餌食だ。そこで、手の臭いが雛の体にうつらないようにポリ袋を使って巣に戻してやった。その後は、巣に収まってじっとしている。

 しかし、親鳥の鳴き声はどこからか聞こえるのだが、昼になっても餌をやりに帰ってきたけはいは感じられない。このままだと、この雛は飢え死にしてしまいそうだ。

 生育がよく力の強い雛は、弱い雛を巣から落としてしまうということも聞く。でも、キジ鳩の場合、雛は2羽だけだ。2羽とも大きくなっていたので、窮屈そうに巣の中でモゾモゾ動いてはいたが、強い方が蹴落としたとは思えない。いままで、この雛は巣の奥の方にいた雛で、首をもたげることはあってもストレッチも何もしていなかった。もう1羽のいなくなった雛は、しきりに上の枝に登ったり、羽を片方ずつ伸ばしてストレッチをしたり、羽をばたつかせたりしていた。もしかすると、そちらの雛が今朝巣立ちのときに、このちょっと育ちの遅い雛を間違って地面に落としてしまったのだろうか。それとも、この雛は、巣立ちに必要な力を持ち合わせていないので、母親に巣立ちを促されたけれど飛ぶことが出来ずに残されてしまったのだろうか。

 いまは、自分についてこなかった雛がいることに気づいた母親が、餌をやりに戻ってくることを祈っている。

 6月10日朝
 昨日巣に戻した雛を窓越しに覗いてみると、もう動かなくなっていた。これが巣立てなかったものの宿命なのだろうか。体の弱いもの、体力のないものが自然界で生きていくのは大変なことだ。こうして、弱いものが淘汰され、強い遺伝子をもったものだけが生き延び、子孫を殖やしていくのだろう。これが自然界の掟なのかも知れない。カゴに入れて餌をやれば生き延びたかも知れない。また、野鳥保護機関に持ち込めば助かったかも知れない、そう思うと少々悔いは残る。しかし、万が一この雛が生き延びたとしても自然にかえせなければ意味がないし、自然に帰ったとしても生きていける能力があるかどうかは分からない。いま、私の頭の中にはいろいろな考えが交錯している。

 1羽が巣立てなかったことで、今年のムベ棚でのキジ鳩子育て成功率は1/2だった。おととしは台風で巣を捨てて子育てを放棄してしまったし、昨年は大雨続きで雛が死んでしまったから、過去3年間のトータルでは1/6の成功率ということになる。この調子で行くとキジ鳩の世界も少子高齢化になってしまいそうだ。

コメント

  1. カーメル より:

    Unknown
    私は2年前まで信州に住んでいましたが、同じような経験を何度もしていました。
    うちの場合駐車場の石垣の間に、黄セキレイが毎年巣を作り、毎年猫かキツネに食べられていました。卵を食べられていた時も
    あります。
    「何であんな低い位置に…」と思う所に巣を作るのですが、ポタさんと同じで「自然に手をつけては」と毎年何もせず、見守る一方でした。
    でも今考えたら1回ぐらい育ててやればよかった(親が見捨てる時もよくあったので)かなと、少々残念に思います。
    キジバトちゃんはどうなったのでしょうか?
    同じような体験をしていたので、思わず書き込んでしまいました。

  2. ポタ より:

    雛のその後
    書くのがちょっとはばかれたのでそのままにしていましたけど、翌朝みると巣の中で死んでいました。
    可哀相だけど、これが自然なのだと自分に言い聞かせています。
    来年もきっとやって来て子育てをすると思いますが、こんどは2羽とも無事に巣立ってほしいものです。