我が家流「雑煮」

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 我が家の雑煮は、コンブと鰹ぶしで出汁をとり、薄口醤油などで汁をつくる。具はサトイモとコマツナだ。そこに、茹でた角餅を入れ、盛りつけてから紅白の蒲鉾を載せて、上から青のりや削り節などをかけて食べる。東海と関東のミックス雑煮だ。

 私の子供の頃は千葉県の九十九里に近いところに住んでいた。ここでは、具はコマツナだけで、かけるのは「はばのり」だ。「はばのり」は、植物学上は、カヤモノリ科の海藻。セイヨウハバノリ属の「ハバノリ」といい、岩礁に生え50センチにもなるそうだ。それを初冬の頃、岩海苔を摘むように浜の女性が摘み取る。そして、海苔のように四角くひろげて干す。我が家では軽く炙って手で細かく揉み、削り節をまぜて雑煮にかけていた。海苔と同じで焼くのが難しく、ちょっと火に近づけすぎると、すぐに焦げてしまう。

 「はばのり」はちょっと塩気があり、海藻の香りが強い。「のり」という名前が付いているが、「のり」とは全く違った香りだ。また、硬くて歯ごたえもある。それを雑煮のモチが見えなくなるほどかけて食べる。モチを全部食べ終わって汁を飲むとき、椀の底にたまった「はばのり」を箸で集めて食べるのが楽しみだった。

 その後、引っ越してしまい「はばのり」が手に入らなくなったときには、「干葉(ひば)」をのせたりもしたが、「はばのり」の味とは雲泥の差だ。
※干葉……ダイコンの葉を干したもの。