産直店で「八ツ子」という野菜をみつけた。
ポリ袋が土でよごれて中がよく見えないので触ってみると、なにやらゴロゴロした小さな丸いものが入っているようだ。「新顔野菜」かと、さらにじっくりと観察して見たら「ヤツガシラ」の子イモだということがわかった。それにしても、「八ツ子(ヤツゴ)」とはうまくつけたものだ。
ふつう、ヤツガシラは親イモだけしか出荷しないので、家庭菜園でヤツガシラを栽培していれば別だが、普通の人は子イモを見る機会はほとんどない。ヤツガシラの収穫時期は秋だから、売っていた「八ツ子」は親イモにつけたまま保存してあったものだろう。
(※子イモは親イモと離すと腐りやすいので、種芋用の子イモも親イモにつけたまま保存する)
ヤツガシラの子イモも、サトイモの「衣かつぎ」のように蒸かして食べる。皮が付いたまま洗って、尖った方を少し切り落とす。そして、切り口のまわりの皮をグルッと包丁で剥いてから蒸かすと、食べるときに皮がとりやすい。
サトイモの「衣かつぎ」はヌルッとした食感だが、ヤツガシラの子イモはホクホクした食感だ。「衣かつぎ」のようにツルッとは飛び出してこないが、蒸したてのアツアツのを指で強く挟むと、中からイモがあらわれる。「八ツ子」の蒸したのは「衣かつぎ」とはいわないかも知れないが、おなじように生醤油をつけて食べると美味しい。
ヤツガシラの語源は、「八ツ」+大きくゴツゴツした数個の「イモ(頭)」。「八ツ」は「八百八町」「八百八橋」「八百八寺」の「八」と同じで、たくさんという意味だ。千葉県に「八街(やちまた)」という地名があるが、この八も同じかと思って調べてみたら、八番目に開拓されたということからついた地名だった。ついでに「八」のつく語をいろいろ連想してみると「嘘っ八」、「八百長」、「やけのやん八」など、たくさんあることに気づく。八が多く使われたのは、七や九より語呂がよかったからかも知れない。ナナツガシラやココノツガシラよりヤツガシラの方が舌もなめらかに動くようだ。