カキモチ 欠き餅 掻き餅 柿餅

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 「カキモチ」というと、都会では、揚げたものや焼い焼いたものなどしか売っていないが、田舎に帰ると生のカキモチが手に入る。

 カキモチには、大豆、黒大豆、ゴマなどが入っていて、蒲鉾を平たくしたような形に薄く切ってある。昔は、これを炭火の上にのせた網で焼いて食べたものだ。

 懐かしくて買ってきたカキモチ。ガスの火ではすぐ焦げてしまうので、電子レンジに入れてガラス越しに観察し、餅がプーッとふくれた時点で取り出して食べてみた。

しかし、どうも昔食べたカキモチとは食感が違う。軟らかくて、ふつうの餅のようにべたべたしている。炭火だと、ちょっと焦げ目がついて、表面が硬くなる。ときには、焼きすぎて黒く、一部が炭のように黒くなることもあるが、その焦げた部分を、まだ熱いうちに手のひらでポンポンとはたきとり、醤油や砂糖醤油につけて食べる。それがまた楽しいし、焦げの香りが何とも言えなかった。

 「カキモチ」は漢字で「欠き餅」。もとは鏡開きした餅を欠いて食べたことから、そう呼ばれるようになったらしい。子供の頃、硬くなった鏡餅を小さく割って焼いたり、善哉に入れたり、油で揚げて食べたことがある。鏡開きが楽しみだった。

こんな行事も食べ物が有り余っているいまは忘れ去られようとしているが、伝統の行事だけは大事に残していきたいと思う。そこで、鏡餅だけは毎年飾っている。飾るだけだからと、パックした安物の餅をスーパーで買ってくる。最初はおおきなりっぱなのを飾っていたが、だんだん小さくなり、ついに、ことしは「百均の鏡餅」になってしまった。