塩汁鍋(しょっつるなべ)

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 ここ2、3年、近所のスーパーでも「ハタハタ」が買えるようになった。図鑑で調べてみたら、「ハタハタ」は、スズキ目、ハタハタ科、ハタハタ属の魚だ。普段、植物図鑑しか見てないから科名や属名が変わっていておもしろい。

 ハタハタは、漢字で書くと「鰰(他にも書き方があるが……)」。日本海側に分布するということだが秋田県が主産地だ。語源をたどると、稲妻のことを古語でハタハタ神というらしい。ハタハタの収穫は11月から12月。この頃になると、産卵のため浅い海岸近くにやってくる。日本海側では、大陸の冷たい高気圧が張り出してきて、いわゆる「雪起こしの雷」が鳴るころだ。そのころに捕れる魚ということで、漢字も魚偏に神となった。

 何年か前、「きりたんぽ」を食べにわざわざ秋田まで行ったことがある。そのとき、「塩汁(しょっつる)鍋」も食べてみようということになり、宿泊先のホテルの レストランで注文した。セリ、ネギ、ゴボウ、エノキ、シュンギクなど、きりたんぽに入っているのとおなじような野菜に豆腐とハタハタが入っている。味付けは醤油ではなく、塩汁という魚醤(ハタハタを塩とこうじで漬け込んだものらしい)だ。雪国の鍋だから、もっとこってりしたものを想像していたが、食べてみると意外とあっさりした鍋だった。

 買ってきたハタハタは塩焼きにして食べた。食べるまえに、あまり魚体が綺麗だったので、絵を描いてみたくなった。尾びれがくっついてちょっとスリムになったが、まあまあの出来だと自画自賛している。

 明日からは、もう3月。魚売り場をにぎわしたハタハタとも、今年の冬までまたお別れだ。